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「くそっ!なんで投げれねんだ!」
坊主頭の少年は、凛々しい顔を歪めてひたすらボールを橋の欄干の壁に向かって投げ続けている。
「あ、あの男子、いつも走ってる人…。どうしたんだろ?いつもと様子が違うような…」
楽器をかかえて川原を帰る途中だったその少女は足元に転がってきたそのボールを拾った。
「あの…これ…。」
少女の方を見た少年はまっすぐに少女の瞳を見て言った。
「あ、いつも楽器吹いてるやつ。しゃべるのはじめてだな。
お前、頑張れよ!その楽器吹くのうまいもんな。
俺は、もう走りにもこないかもしんないから、今日でお別れかもしんねぇけど。」
そう言ってふと淋しそうに笑ってボールを受け取ると、少年は走って帰っていった。
そして、次の日からその少女がその少年に会うことはなかった…。
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