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「今日も行けなかった…。」
北山莉緒は上靴を脱ぎ、ローファーに履き替えて校門の手前で校舎を見上げた。
長い黒髪のポニーテールが揺れる。
もう何回見上げてることか…。
3階から楽器の音が聞こえる。
結局自分はいつまでも意気地なしなのだろうか…。
中3の夏、川原で出会った少年に言われた言葉を糧に高校では頑張ろうと意気込んで入学したはいいものの、やっぱりまだ意気地なしの自分からは脱却できないでいた。
今日はもう帰ろう。
外では野球部が外周を走っていた。他の部活もそろそろ新入生の仮入部が終わり本入部者が続々と練習に加わってきている。
急がなきゃ仮入部期間はもうすぐ終わる。
何度も音楽室の扉の前まで行った。
でもそのたびに中2のときの記憶が蘇る…。
怖い…またあんな目にあったら…。
「今日も川原で練習しよう…」
莉緒はうつむき、校門を出た。
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