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◇
「おい!おいって!」
莉緒は隣の席の男子から小声で呼ばれていることに気がついた。
「何?授業中!」
小声で返事する。
「教科書見して。忘れた。
先生ー!教科書忘れましたー。北山さんに見せてもらってもいいすかー?」
「おー。見せてもらえー。次から忘れないようになー。」
「はい。すんませーん。」
「じゃ北山さんよろしく。」
机をくっつけてくる。この人はたしか、瀬名川陽くん?イケメンで野球部でいつも女の子から追いかけられてる、莉緒とはまったく接点のない人物だ。
莉緒は仕方なく、くっつけた机の真ん中に教科書を置いた。
背が高く、ガッチリしたスポーツマン体型の陽の肩が時々かすかに触れるとドキッとしてしまう。
「北山さん、吹奏楽入んねーの?」
コソッと陽はささやいた。
「えっ?なんでそんなこと知って…?」
動揺した莉緒はあやうくシャーペンを落としそうになって、陽がナイスキャッチした。
「セーフ!
俺のこと覚えてねーか。ん~いいよ。別に。
俺はクラス入ってすぐわかったけどな。」
覚えてないって?
前に会ったことある?
莉緒はちらっと陽の顔を見た。
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