72人が本棚に入れています
本棚に追加
わかんない…。えっ?いつ会ったの?
「思い出せないって顔してんなー。結構傷つくんだけどー。」
1番後ろの席をいいことに陽はコソコソしゃべり続けた。
「川原でいつもやってたじゃん。ほら、ラッパみたいなやつ…。」
…えっ?あのときの男子?
またシャーペンを落としそうになった。
「えっ?全然わかんないよ。髪伸びてるし、背高くなってるし、まるで別人…」
驚いたせいか声がちょっと高くなった。
「おい!うしろーうるさいぞー!」
「はーい。俺ちょっとわかんないとこ聞いてましたー。以後気をつけまーす。」
間髪入れずに陽が答えて、すかさず、莉緒のノートを引っ張って書き出した。
『なんですいそうがくはいんないの?おまえうまいじゃん。』
『中学のときに吹奏楽でいろいろあって…以後トラウマに…』
『いつもかえり3Fおんがくしつみあげてるじゃん?はいれよ。おまえならできる!』
莉緒は思わず顔を上げて陽の顔を見た。
そこには、まっすぐに莉緒を見る瞳があった。
あの時と同じ。
なんで、そんなに私の背中を押してくれるの?
『がんばってみる…』
ノートに書いたところで、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
陽は授業が終わると小さい声で
「がんばれよ。」
と言って肩をぽんとたたき、すぐ部活のために教室を出て行った。
最初のコメントを投稿しよう!