引っ越し

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 そんなに怖い話ではないと思いますが、実際にあった体験を書いていきたいと思います。その方がいわゆる怪談になるかもしれないし、伝えたいなと思ったからです。  ただ、今までの作品と違って「実話」なので、決して、幽霊や心霊現象を馬鹿にするものではないことを最初にきちんと記したいと思います。  さて、僕は霊感がある方では決してなく、今までの30年ちょっとの人生のなかでいわゆる心霊現象と遭遇することはほとんどありませんでした。あったとしても、たとえば小学校のときのサッカー少年団の合宿で合宿所の大広間で先生の怖い話を聞いているときに突然壁が「ドン」と蹴られたような大きな音がしたとか、大学のときに先輩に呼び出されて行った深夜の公園が実は曰く付きの公園で、そのことを告げられたときに携帯が震え、見知らぬアドレスからメールが送られてきていたとか、どれもイタズラとか偶然と片付けられるようなことばかりでした。  もしかしたら霊はいるのかもしれないと思っていましたが、僕にとって心霊やオカルトといった類いのものは、テレビや映画などにしかない、好奇心を満たすただの対象でしかありませんでした。  ところが、結婚した相手は少し霊感があるのか、子どもの頃に自宅のお風呂で小さな子どもや男性を目撃したり、妙な気配を感じることもあったという人でした。また、相手の父親はさらに霊感が強いらしく、お盆近くになると毎年のように亡くなった祖父が夢に出てきて、そろそろ墓参りをしないといけないと家族みんなに話したり、僕たちの引っ越し先でいいなと思っていた中古の一軒家に「もう先客がいる」と言って引っ越しに反対するなんていうこともありました。他にも親戚や家族に霊が見える人が何人かおり、こうして振り返ってみると、霊感のある家なのかもしれません。  ちなみに相手の実家のすぐ近くにはお墓があり、そうした環境から幽霊が見えたのかもしれない、と相手は言っていたことがあります。  そんな相手のご実家にしばらく住ませてもらう機会がありました。今年一年生になる上の子が産まれて、相手が仕事を辞めたときです。僕自身もそのときはまだ大学に通う身だったので、3人だけで生活を営むのは難しく、一緒に住ませてもらいました。
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