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 あれは、実家へと変える途中の山道でのことでした。その日の天気は雨で、ブラインドガラスを叩く雨がうるさいほどでした。こんな雨の中どうして帰らなくてはならないのか。  それは実家で母が倒れたとの連絡をもらったからに他なりません。10年以上実家の方には顔を出しておりませんでしたから、母の容体などこれっぽっちも気にしてはいなかったのです。  早く行って母の容体を確認したら、この日のうちに帰ろうと思っていました。薄情者だと笑うかもしれませんが、私には私の生活があったのです。  夫に子供を預けてはいましたけど、どうも心配で仕方なかったんです。ですから、顔色をみて大丈夫そうだったらすぐでも家に帰ろうと思っていました。  アクセルを踏みさらに車を加速させました。なにせ早いところ実家の方へついてしまおうと思っていたものですから。ですが、薄暗い山道で大雨でしたから、見通しは最悪でした。  いくらワイパーで雨を撥ねていたとしてもきりがありませんでした。けれど、私は視界の悪さに気をとられるよりも、自分の気ばかりを優先していました。それがきっと行けなかったのだと思います。     
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