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ハイライトをめいいっぱい辺りを照らしながら進んでいると、突然目の前に人が現れたのです。確か長い黒髪をした女の人のように思います。なにぶん突然のことでしたから人相を確認している暇などありませんでした。
私はとっさにブレーキを踏みましたが、加速をしていた上この雨です。容易に止まれることはできません。
けたたましいブレーキ音が響き、私は衝撃に身構えました。ああいう時、言っては悪いものですけど被害者のことよりも自分の今後のことが頭をよぎるものですね。
お金のことや家族への心労など色々な心配が私の頭を回っていました。でも、心配をしたところで車は止まるわけではありません。
私は顔を下に向けてハンドルをきつく握りました。人が自分の車にはねられていく様なんて見たくはありませんでしたから。
車体がゆれ、衝撃によってハンドル部分からクッションが飛び出して来ました。ああ、やってしまった。私はそう思いました。けれど起きたことは覆しようがありませんから、意をけっして顔を上げました。
しかし、どうしたことか。そこには車体によってひしゃげたガードレールがあるだけで、女性の姿がありません。そんなバカな。そう思った私は慌てて車から降りて車のフロントへと回りました。
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