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 ガードレールに突っ込んだため、前面部分は凹み、バンパーは地面に落ちてしまっていました。けれどフロントのどこにも血などついておらず。車の下を覗いて見ても女の姿はありませんでした。  ただの錯覚だったのだろうか。いや、確かに見たはずなのに。  私はその後も車の周囲やガードレールの外側にも目をやって女の姿を探しました。けれど、いくら探しても女の姿はなかったのです。  単なる気のせいだ。そうに違いない。私は自分にそう言い聞かせて、一先ず車に戻りました。傘もささずに外に出ましたから、身体中はびしょ濡れで服には雨水が染み込んでいました。  助手席に投げていたバックからタオルを取り出し、髪や服についた水滴を取りながら、携帯電話で警察と保険会社へ電話しました。女の所在はどうであれ、事故は事故でしたから。 電話を終えた私は警察にその場で待機するように言われたので、車の中で到着を待つことにしました。雨の中傘をさして待っているというのもいやでしたし、何よりあの煙のように消えた女が出てくるのではないかと不安にかられたのです。  雨粒が乱暴に車体を叩き、雷鳴が遠くから聞こえて来ます。ラジオなどもつけていなかったので、外からの音は余計に大きく車内に響いていました。     
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