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Q. パンはパンでも、
パンッ
薄暮の住宅街に、銃声が響き渡った。
俺は固唾を飲んで相手を見つめる。彼はしかし、すました顔で煙草を味わい続けている。
「宴だねえ」
ヤツの口調はなんだか楽しそうだ。こんなときまで、と舌打ちしそうになるが、その豪胆さはある意味、敬服すべきなのかもしれない。
煙草の火が、空に残る残照を吸い込んでいるかのように、赤々と灯っている。
「どうするつもりだ」
「どうするって、そりゃあ」
手放された煙草が、アスファルトに跳ねる。
「夜のパン祭り、かいさーい」
ニタニタと笑いながら、彼は足で踏みにじるように火を消す。ムカつく野郎だ、本当に。
黒く煙ったセブンスター。漆黒に染まりゆく空。向かい合う、ピストル。
夜が始まる。
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