なぞなぞ:パン

2/2
前へ
/2ページ
次へ
 Q. パンはパンでも、  パンッ  薄暮の住宅街に、銃声が響き渡った。  俺は固唾を飲んで相手を見つめる。彼はしかし、すました顔で煙草を味わい続けている。 「宴だねえ」  ヤツの口調はなんだか楽しそうだ。こんなときまで、と舌打ちしそうになるが、その豪胆さはある意味、敬服すべきなのかもしれない。  煙草の火が、空に残る残照を吸い込んでいるかのように、赤々と灯っている。 「どうするつもりだ」 「どうするって、そりゃあ」  手放された煙草が、アスファルトに跳ねる。 「夜のパン祭り、かいさーい」  ニタニタと笑いながら、彼は足で踏みにじるように火を消す。ムカつく野郎だ、本当に。  黒く煙ったセブンスター。漆黒に染まりゆく空。向かい合う、ピストル。  夜が始まる。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加