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プロローグ 出会い
金融機関は転勤がつきものだ。
そんなことは重々分かってはいるし、勤続15年になると、転勤も5回を超え、もう十分なほど経験値を得ているはずだ。
だけどやはり、ほぼ三年周期で住むところや職場の人間関係がリセットされてしまうストレスは、かなり大きい。
それに加え、今回の俺は仕事の内容まで変わってしまう。
この支店で俺が命じられた担当業務は、新人時代にしか経験したことない預金窓口業務だなんて…
桜の舞う4月1日付の異動で帝産銀行の西町支店に赴任してきた高橋は、赴任初日の全体朝礼の中に組み込まれた赴任者紹介が始まると、プロフィールを読み上げる支店長の横に立ちながら、そんなことを考えていた。
高橋の隣に立つ支店長の川崎は、笑顔を絶やさずに“課長”の高橋を筆頭に、今回の異動で赴任してきた3人の行員の経歴と、この店での担当業務の紹介を始めた。
高橋は少々苦虫を噛み潰したよう表情で聞いていた。
川崎支店長は高橋の赴任が決まると、前もって電話で、「高橋課長のキャリアのためにも、管理職では未経験の業務を担当してもらいたい」と高橋に連絡してきた。
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