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だが支店長の川崎は、融資課を寺田一人に任せ、窓口業務課の課長をベテラン女性課長と高橋の2名体制にすることを選んだ。
この場合、高橋が“見習い”課長だ。
高橋にとっては、腹立たしいことに変わりはないが、自分が融資課長に選ばれなかった理由は聞きたいとは思わなかった。
聞いてどうにかなるものではないし、聞いて腹をたてて精神的ストレスを抱えるくらいなら、知らないままの方がマシだ。
自称人事通の先輩からは、川崎は高橋のかつての上司と次期エリア店店長の座を争っているため、その愛弟子である高橋を冷遇しているのではないかと教えてくれた。
信憑性は定かではないが、如何にもありそうな理由だ。
程なく、ニコニコし続けた川崎支店長の、転入者3人の紹介も終わり、肩書き的に上位である高橋から自己紹介が始まった。
嫌味の一つでも言ってやろうかとの邪心がなかったわけではないが、初日から雰囲気を壊すほど無神経でも無鉄砲でもない高橋は、無難にテンプレ通りの挨拶を済ませた。
一歩下がってホッとしつつ、次の転入者の挨拶を聞く。
“そういえば、後の二人についての支店長の紹介を聞いてなかった”
やっぱりイライラしていたのだろう。川崎の紹介が全く耳に入っていなかったことに気づいた。
二人目の挨拶は、営業課の女性正社員だった。20代前半で、今回が初めての転勤らしい。
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