私が死んだ理由

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モノクロだった世界が色を持ち、紙に書かれたように見えていた世界が立体的に動き始めた。 生きていて幸せだと初めて感じてしまった。 私の生きてきた世界は薄暗くて、深海に沈んだみたいに押しつぶされそうで、息を吸うのもやっとだった。 「お前みたいなのが生まれてきたから人生めちゃ食っちゃになったんだよ」 「お前、変。気もいからどっか行けよ」 「早く死ね」 「いる価値ないって分かんないの」 悲しい、苦しい、辛い、そんな感覚は遠く遥か彼方においてきた。 「生きててごめんなさい」 傷つく感覚ももうなかった。 それから時は流れて。 「大好きだよ」 あなたに出会った。 あなたは、私の話を黙ってずっと聞いてくれた。 時折悲しそうな顔をするのはなぜ? あなたは、自分のことをたくさん私に話してくれた。 あなたは、私の手を取ってゆっくり歩いてくれた。 あなたの優しい手で、髪を撫でてくれるととても嬉しかった。 あなたに抱きしめられると、私は本当に幸せ。 こんな私を愛してくれる人がいたんだって、思うだけで涙があふれてきた。 幸せで、幸せで。 私は薄暗くて、深海のように押しつぶされる場所にいたことを忘れそうだった。 「お前なんかが幸せになる権利はない」 「幸せになる価値があると思ってるのか」 「自分のいるべき場所を間違えるな」 「周りを不幸にする存在」 薄暗いあの世界が私を呼ぶ。 戻りたくない、戻りたくない。 でも、大切なあなたを不幸にさせたくない。 それに、この幸せな思い出のまま、私の時を止めたい。 最後のわがまま、許してほしいとは言わないから。 幸せをくれて、ありがとう。 あなたとの幸せな思い出を胸に、 私の好きな大空へ。
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