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そして、なぜか職員室はハチの巣を突いたような大騒ぎになっている。
「小久保先生、警察に捕まったらしいで。」
「え?あの小久保先生が?一体何したん?」
「それがね。下着泥棒やて。ビデオに下着取ってるとこ映されたらしいで。」
「では朝礼を始めます。その前に校長先生から小久保先生についてお話があります」。
司会の教師がそう言った後、校長から小久保教諭がパンツ泥棒をやって警察に捕まったことが伝えられた。
「大変恥ずかしい話ですが、小久保先生が警察に捕まり、今事情を聞かれているそうです。この後、全校集会を開きます。」
「こりゃ懲戒免職やな。」
人間というものは他人のこととなるとこうまでも冷淡になれる動物なのだろうか。私は全くの人ごととして聴いていた。教師の破廉恥罪はまがうことなく懲戒免職である。まだ三十代で奥さんも子供もいながらこれからどうやっていくのだろうか。少し憐憫の情のようなものを感じた。
「しかし、パンツが欲しければスーパーで買ったらいいのではないか。」
そう思って隣に座っていた教師に言うと、「あんたはあほか。」と耳を疑うような返事が返ってきた。
なぜ私がアホ呼ばわりされなくてはならないのだろうか?
すると即座にその教師は言った。
「ああゆう嗜好を持った人間はなあ、女の人が穿いたパンツやなかったらあかんねん。それで興奮するんやがな。」
そんなものなのか。そういう趣向のない私は妙なことで合点した。
それからすぐに全校集会が開かれることになったが、情報とは早いもので体育館へ向かう頃には既に生徒達の反応が伝わってきた。女子生徒達は口ぐちに「きもい」とか「いやらしい」とか言っているらしい。さもありなん。パンツ泥棒を捕まえてみると教師だったのだから。
一時限目の始まる前、いよいよ全生徒を集めての全校集会が開かれた。進学校では珍しい生徒のざわつきようである。私は体育館の後ろ扉に陣取ったので生徒達が何と言っているのかは聞き取れなかった。
「え、小久保先生?何したん?パンツ泥棒?きも!」
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