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「ここは……どこだ?」
口からこぼれた疑問も何も無い空間に消えていった。
ここは見渡す限りの暗闇が辺り一面に広がっている。その他には何も無い。いや、僕の足元には……一緒に下敷きにされたはずの彼女がいるが。
「……ん、うぅ……」
彼女が目を覚ましたようだ。僕同様、周りを見渡し状況を確認している。何が起きたのか分からない、といった感じだろうか。
「……大丈夫か?」
僕は彼女と目線を合わせ尋ねた。すると少し驚いた顔を見せつつも「大丈夫」と答えてくれた。
「ねぇ、ここ……どこだろう」
「僕にもよく分からない」
本当にここはどこなのだろう。ただただ深い闇が広がるばかりで、少し気味が悪い。
そう考えていた時、暗闇から声が響いた。
『よお、やっと目が覚めたのか』
「「……っ!?」」
突然響いた声に僕らは息を呑む。聞こえてきた声はとても低く、恐怖を覚えるような男の声だった。
『やれやれ、驚きすぎだぜ?』
僕らが声を出せずに固まっているとその声はまた話し出した。
『まぁ、いいか。それよりよく聞け』
『ここはあの世とこの世の間みたいな所なんだが……っておい、聞いてるのか?』
僕達があまりに返事をしなかったせいかその声には怪訝そうな様子が伺える。
「あ、ああ。聞いてる」
「私も……聞いてるよ」
やっとの事でそれだけを返す。すると『そうか』とだけいいその声はまた話し始めた。
『えーと、お前らは今……生と死の狭間にいるわけだが』
生と死の狭間、ということはやはり僕らは押しつぶされて死んだのと近い状態なのか。
『一人だけ助かることができ、もう一人は助からない。要するに死ぬということだ』
どちらか片方しか助からない?
『ここは頭でイメージしたものが手に入る。それで助からない方を殺すなりすればいい』
それは、僕が彼女を殺すか……彼女が僕を殺すかしなければならないということだろうか。
『この場所ではそれくらいしか生と死を表すものがない、不安定な所なんだ』
狭間と言っていたし不安定なのは当然かもしれない。だが……好きな人を殺せというのはなんとも言えない辛いものがある。
『全く……命の数を決めるのも大変だな……』
僕にはよく分からないことをその声はため息を吐きながら呟いた。
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