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私は雨の日に打ち合わせの為、営業先へ急いだ。
いつもなら車でなんだけど、今行くところは近場ということもあり、歩き。
これが失敗だった。
歩いている横を車が通りすぎる。
その瞬間、通る車が跳ねた雨水が私にかかってしまった。
…それもかなり豪快に…。
「うわぁぁ~!!なんでよ。びしょ濡れになっちゃったじゃない!!」
1人で悲鳴のような声をあげる。
ハンカチを取り出して、拭いてみるが、びしょ濡れの為、まるで効果なし…。
冷たいし、濡れて恥ずかしいし…でも打ち合わせが…どうしよう…。
腕時計とにらめっこしても解決策は浮かぶわけでもないけれど、途方にくれた。
その時だった。
「あなた、どうしたの?」
後ろから柔らかい女性の声が。
振り返ると、これでもかと言うくらいの美女が…。
あまりの美女に、惚けていると、
彼女は瞬時に私の状況を把握して、私の手を掴んだ。
「え?あ、あの?」
「そんな格好では風邪引いちゃうわ。私のお店そこだから、いらっしゃい」
「…で、でも。私これから打ち合わせが…」
そう言ったのだけれど、彼女はお構いなしに私とあるお店に入った。
そこはいかにも高級ブティック。
高級そうな装飾が施されている店舗だ。
そんな場所にずぶ濡れの私が鏡に写っていて、いたたまれない…。
先程の美女はタオルを持って来て私に渡すとお店の中にいたこれまた、ふわふわヘアの可愛らしい店員さんとこちらを見ながら話し中。
え?何?
すごく見られて思わず、固まってしまった。
すると、店員さんが姿を消し、次に現れた時にはブラウスとスーツ、それにヒールまで持って私の前に来た。
「サイズ、合うと思うから着てみて」
え、ええ~!?
「あ、あの???着れたとしても、こんな高級なもの、私のお給料では払えません!!分割払いなら…何とか……なるかも…ですけど……」
慌ててそう言うと、店員さんと美女は顔を見合わせてから可笑しそうに吹き出した。
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