7人が本棚に入れています
本棚に追加
「はい、もちろん。あ、それでこの間のお借りしたスーツ…」
そう言おうとすると桂田さんは、
「あれ、歩美ちゃんにあげたんだからいいのよ。返さなくて」
さらっと言った。
「でも…ちゃんとクリーニング出して…」
原田さんが微笑みながら言った。
「歩美ちゃん、そこは店長に甘えなさい。いくらサンプルとはいえ、そうそう貰えないから普通」
「え、でも…」
困っていると、
「それはそうと、雨の日シンデレラなんだから王子さま、必要よね。やはり…」
桂田さんが、なんかとんでもないことを言い出した。
お、王子さま?
え?なんで?
そう返すと、二人はフフとまた笑う。
「だって、その方が面白いじゃない?」
「確かに…打ち合わせた会社にいないの?そういう人」
「ええ!?だだ、面白がっているだけですよね?」
そういうと、二人は笑ってる。
ほぼ同時に。
シンクロしているように。
「だって、その方がロマンチックでしょ?」
「…私も欲しいわ、王子さま」
絶対、面白がっている…二人して。
「……でもまあ、まずは私達と仲良くなってから由実ちゃんと歩美ちゃんの王子さま探しをしましょうね」
桂田さんは惚れ惚れするような素敵な笑みを浮かべてそう言った。
雨の日シンデレラ…
ある日、二人の美女がずぶ濡れシンデレラの前に現れて、ドレスならぬ、スーツを差し出し、カボチャの馬車ではなく、車で打ち合わせ場所に…。
さてさて、その後、雨の日シンデレラに王子さまがやってきたかどうかは…まだ誰も知らない…。
完
最初のコメントを投稿しよう!