第三話 しがみつく男

2/4
前へ
/13ページ
次へ
横に大きく揺さぶられたので、彼女たちも短く悲鳴をあげました。 「何?今の?どうしたん?」 彼女が助手席から不安そうに俺の顔を見たので、俺も大丈夫って言おうと、彼女のほうをちらっと向いた時でした。 助手席側のサイドミラーに何かが見えました。 何か動くものが写ってる。 途端に背筋に鳥肌。 全身の毛が逆立った。 「はぁ?!」 俺は何だか判らないまま、身体に来てるいつもの兆候に確信して、左手の数珠を手解きました。 停まってはいけない。 絶対に停まってはダメだ!! 身体中がそう言ってました。 必死に峠をずっと走りながら、俺の様子に不安そうな彼女と友人に、少し笑いながら声だけかけました。 「今からちょっとわけわからんこと唱えるけど、お前ら目を瞑って絶対に開けるな。揺さぶられても絶対に外だけは見たらいけんで?? 分かった??」 彼女たちは泣きそうな声で返事をしてから、うつ向いてぎゅぅっと目を閉じた。 それを確認してから、もう一度ミラーに目をやると、 身体?が千切れまくってグシャグシャでよくわからないけど、確かに男のひとであろう物体が、車の横に貼り付いていました。 鮮やかな真っ赤。血まみれなのはよく分かりました。     
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加