第一話 のぞく女

1/1
前へ
/13ページ
次へ

第一話 のぞく女

みなさんは風呂に入ってる時に、何かの視線を感じたり、気配を感じたりして、なんとも言えない恐さを感じたことはないですか? 俺は、すっごくあります。 小学校高学年まで風呂が本当に恐かった。 だから、兄貴や母に一緒に入って貰っていましたね。 見られるんです。 ひとりで風呂に入ってると、必ず。 ほら? シャンプーしてたり、顔を洗ったりして目を閉じてる時に、何かの気配を感じたりしたことあるでしょ? それに気づいたのは俺が小学校1年の時。 普通にシャンプーしてて目を閉じてたら、背筋にいきなり鳥肌が。 全身の毛が逆立つんです。チリチリと。 あぁ。居るんだろーな。 嫌だなーって思いながら、泡を落として顔を上げると うっすらと開けた風呂の窓から、髪の長い女のひとが見てる。 無表情で、土気色。 まばたきもしない。 ただ、じーっと見てるだけ。 それは、風呂だけの話なので、 俺は見てないふりをして、さっさと身体を洗って、逃げるように風呂からあがるんです。 そしたら、サーっと鳥肌が退いて、逆立ってた毛が元通りになる。 住んでた所は、県営団地。 高校卒業まで長く住んでいました。 部屋は207号室。 そう。 二階なんですよね。 足場なんてまったく無いんです。 ちなみに、窓を閉めていても居ます。 ちゃんと、 ガラスにぴったりと顔をつけて。 一体、彼女はなにが目的なのか、あの風呂に何かあったのか、ぜんぜん知りません。 調べようとも思いませんでした。 しだいに空気みたいに感じていましたからね。 麻痺もしますよ。 彼女とはほんと、ずーっと、何十年ってつき合いなんですから。笑 あぁ。 過去形じゃないのはね。 今もここに居るからなんですよ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加