16人が本棚に入れています
本棚に追加
その言葉に、みんなミツヒコを見ると、ミツヒコはみかんを手にケラケラ笑っていた。
本当に、ケラケラと。
顔がまったく笑ってない。
それどころか、目は閉じたまま階段を降りて、俺らの後ろまで歩いて来ていた。
声だけは、笑いながら。
瞬間。
俺の全身の毛が一気に逆立った。
全身に鳥肌。
これはヤバい!
俺は直感的にミツヒコから後ずさって、いつも左手に巻いてある数珠を手にした。
そしてみんなを下がらせて、笑い続けるミツヒコを正面に、日蓮宗の十二番。成仏のお経をあげた。
刹那。
ミツヒコが笑いを止めて泣き叫び始めた。
酷い声。
今でも耳を離れない、この世の者から発せられたとは思えない甲高い声。
短い十二番を終えて、御題目を何度も何度も何度も唱えながら、泣き叫ぶミツヒコの肩を数珠で叩くと、叫ぶのがぴたりと止まり、地面に倒れた。
それら一連の出来事を、みんな遠巻きに見ていたので、すぐにアキヒロを呼んで、ミツヒコを抱えてみんなで公民館に連れ帰った。
公民館に着いて落ち着いたのも束の間。
アキヒロが
「ナオキは?ナオキが居らん??」
ナオキは寺の境内に隠れて脅かしてたはずだった。
ミツヒコが降りて来ても、ナオキはまだだ?
急いでみんなで固まって、境内に向かって長い長い階段を登りきると、
寺の境内の真ん中にナオキが居た。
最初のコメントを投稿しよう!