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気づけば私の記憶は失われ、あの場所にいた。
父と母は毎年あの場所に訪れる。
「ごめん、ごめんな……」
ただそれだけを言って私の元を去っていく父の背は、ありありと哀しみと寂しさを感じ取れてしまってひどく小さく見えた。きっと、私の死を完全なものとして考えることができなかったのだろう。
けれども並んで歩くと、やはり父は大きく感じた。その優しさと愛情が痛い。
愛されて生まれ、愛されて育ってきた。だから愛果、愛の果実。
でも、せっかく大切にしてもらっていたのに自分で壊してしまった。しかも、皮肉にも愛の花の前で。
ごめんなさい。私のほうこそ、ごめんなさい。
こんなことにしてしまって、辛い思いをさせてしまって、ごめんなさい。
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