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彼女と初めて出会ったのは私が小学二年生になった日だ。
未だ春休みが終わらず、後に課題を親と一緒にやることになると考えないで、私は公園に遊びに来ていた。
父親と無邪気にキャッチボールをして遊ぶ私は、傍から見ればとても可愛らしかっただろう。
父親が投げたボールを下手くそなりにキャッチし、そこまで力が無い腕で父に投げ返す。
父は足下までにも届かなかったボールを拾い、再び私に送球する。
すると私は上手く取ろうとして小さなグローブを出来るだけ大きく広げ、しかしボールを取り損ねる。
転がるボールは麦わら被った少女の足下へと向かう。
私はボールを追うのに夢中になり、少女がそこにいることに気がつかなかった。
少女はボールを拾うと、突然追う物が無くなって驚く私に笑顔で渡した。
そんな少女が、冒頭に出てきた彼女である。
私と彼女の出会いはこんなものだ。
春休みが明けて前日に課題を眠らずに全てやり遂げた私は、これから過ごす中学最後の年の組と、これから共に過ごすことになる者達の名を、壁に貼り出された名簿の中から探し出す。
嗚呼、神という者は分かっている。
私は、彼女と同じクラスになった。
彼女は私が小学四年の頃から身長が急激に伸び始め、今や私と十程の差があるのではないかと思うほどになった。
彼女は中学でバスケ部に入り、エースとして頑張っていた。
対する私は卓球を学び、小三の頃から太り始めた体を鍛え、なんとか十キロ痩せたのである。
彼女とは下校時に時々出会うが、何を思ってか全く声をかけずに過ごしていた。
私は確かに成長はしたが、社会性は少し退化してしまっていた。
シャイになった私は彼女に挨拶をする事はせず、また、誰にも挨拶をせずに座った。
その後、十一の月日が過ぎた。
私はすっかりクラスの日陰者となり、彼女からの印象はただの小中同じの暗くて小さな男子であった。
だが、私は彼女に恋愛感情を持っていた。
それは所謂初恋でもあった。
いつかこの心を伝えなければ。
そう思って過ごしていたら、もう既に卒業間際であった。
私と彼女の進学先は全く違う。
何をやろうと全て手遅れであった。
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