9.ー柴谷視点ー

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 ヨロヨロとデスクに戻ると、佐藤が心配そうにこちらへ寄ってきた。 「おい、大丈夫か?」 「大丈夫ス。名誉の負傷ス」 「なかなか帰ってこないと思ったら、そんなに腹痛いのか。早退するか?」 「しないス」 「薬飲めよ。なかったら貰ってきてやるからな」 「ウス」  佐藤の半分は優しさで出来ている。  こいつが布施だったら簡単なのにな。まぁ、俺が嫌だけど。  そんなわけで俺を気遣った佐藤は仕事の大半を手伝ってくれた。  そのうえ、今日は客先に行く予定もないからと早退を促す。  俺はお言葉に甘えて会社をあとにすると、布施の部屋へと向かった。  合鍵を使って中へ入る。  部屋は俺が昨日出て行ったままだった。朝散らかしたであろう服やベッドを直す。  その時ふと、布施の冷たい言葉がリフレインした。  ──付き合ってないし、付き合うつもりもありません。  そんなはずない、あれは照れ隠しで、意地張ってるだけで。  悪い予感を振り払っても、不安は襲ってきて俺の心を冷やす。 「千秋はもしかして、俺のこと、好きじゃない……?」  口に出した瞬間、ズキッ! と胸が痛くなった。  強烈な痛みに、思わず胸を抑えてうずくまる。
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