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「────休日はゆっくり過ごせたみたいですね、布施さん」
2人分のコーヒーを持ってミーティングルームへやってきた、メガネをかけた青年が私に笑いかける。
山際 望。ひとつ下の後輩で、新しい私のパートナーだ。
彼は机に紙カップを置くと、洗練された身のこなしで着席する。
「……いつもと何か違う?」
自分ではわからない。頬を捏ねるように触りながら山際に問うと、彼は頷く。
「なんだかハツラツとしてますよ。一昨日まではこう、眉間にシワが」
「ちょっと。誰が般若みたいな顔ですって?」
「言ってないです」
ふふ、と笑いながらコーヒーを口にする。私も倣って紙コップに口をつけながら、手元の書類を差し出した。
山際がまとめてくれたプレゼン資料だ。うちの企画で何ができるか、制作部での過去の作品などを大まかにまとめ、その会社向きの提案などが盛り込まれている。
「これ、さっき読んだ。わかりやすくていいんじゃない」
「ありがとうございます。……そっか、持ち帰られたみたいだったので、てっきり自宅で読まれたのかと」
「んー、そのつもりだったんだけど」
言葉を濁すと、山際は察しのよい笑顔をみせる。
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