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「なんなんだ、あれ……」
柴谷の消えていった扉を呆然と見つめ、ズレたメガネを正しながら山際がポツリと呟いた。
その顔には明らかに軽蔑の色が浮かんでいる。
前から薄々気付いていた。
彼は柴谷のことが嫌いだし、柴谷も山際を避けている節がある。
決定的な衝突があったとは聞いていないから、生理的に嫌いというやつなのだろう。
仕事のやり方も真逆。共通するのは顔が良くて女の子にモテることくらいか。
柴谷はライバル意識みたいなもんだろうけど、山際は仕事への接し方とか性格とかだろう……。
と、何気なく思案していると────
「布施さんは、何故あんなのが良いんです?」
唐突に、山際が言った。
「え? は!?」
え、私が、柴谷を良いと思ってるってこと? え?
目をぱちくりさせて固まる私に、彼は炭酸の缶を横向きに倒してゆっくり回しながら苦笑した。
プルタブをプシッと開けると、炭酸はシュワシュワと跳ねたものの噴き出しはしない。彼はそれをひと口飲んだ。
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