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「男の嫉妬は醜いですよねぇ……って、言ってやってください」
「え……柴谷に?」
「はい。だって、付き合ってるんですよね?」
「つ……付き合ってない!」
驚いた。私が柴谷と付き合ってる? 何を言い出すのだ。
確かに体の関係はある。だから付き合ってると言えなくはないかもしれない。
だけどそういうことを知られたくないし匂わせたくないので、態度には一切出していない。犬猿の仲だと思われているはずなのに。
「柴谷と? ありえない、あんな下半身バカ。山際くんの勘違いよ」
「そうですか? お似合いだと思うのに」
「いや、お似合いとかないから。それ間接的に私を侮辱してるからね」
「ひどい言いようですね。彼氏が泣きますよ」
「彼氏じゃないって!」
思わず声を荒げて否定し、山際をじっと見つめる。
詮索しないってさっき言ったくせに!
メガネの奥を覗き込めば、彼は気まずそうに少しだけ瞳を逸らす。
「いい? 柴谷となんて、付き合ってないし、付き合うつもりもありません」
私があいつに群がる女のひとりだと思われるのは勘弁だ。そう思って、言い含めるように強く否定した時だった。
「……だ、そうですよ。かーわいそ」
山際が缶に口をつけながら言い放った。
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