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山際め、ぜったい狙ってる。俺の千秋と見つめ合うな!!
ドスドスと怒りに任せて廊下を練り歩く。転んで打ち付けた腹が痛い。
あの山際とかいうエロメガネは油断ならない。俺の第六感が警笛を鳴らしていた。
先程のやりとり────。
ミーティングルームの扉の外で息を潜める俺に気付いて、わざと布施をけしかけた、意地の悪い山際に改めて腹を立てる。
──付き合ってるんですよね?
──つ……付き合ってない!
素直じゃない布施なら、そう言うのはわかってる。
俺に惚れてるなんて恥ずかしくて言えないよな。大丈夫、大丈夫。本心じゃない。
俺は動揺することなく聞き耳を続ける。
──柴谷となんて、付き合ってないし、付き合うつもりもありません。
……くっ。
いくら強がりとはいえ、その言葉にキリキリと胸が痛む。
確かに俺たち、付き合ってない。だけど付き合うつもりもないって、それはちょっと言い過ぎだ。
お前が告白しづらくなって困るだけなんだぞ、このおバカさんめ。
──……だ、そうですよ。かーわいそ。
って、こいつわざとか!
明らかに俺を意識した山際の発言に、驚いて飛び退いた──拍子に素っ転び、扉脇に置いてあったなんか硬いダンボールに突っ込む。
何が入ってんだ、角が、痛ってぇ!
俺は痛みを堪えつつ大慌てでその場を走り去った。そして今に至る。
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