9.ー柴谷視点ー

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◇ 「千秋!」  玄関にその姿をみとめた瞬間、俺は思わず抱きついた。 「な、なんですか」 「なんでもねぇ!」 「なんでもないのかよ」  驚きながらも背中に手を回し、ポンポンと宥めるように叩いてくれる。  それが嬉しくてついぎゅうぎゅう抱きしめると、布施は少し迷惑そうに呻く。  顔を覗き込めばうざったそうに目を逸らしたが、頬がほんのり赤くなった。  なんだよ、照れてんのか。布施のくせに可愛い。  そのまま唇を寄せれば目を閉じる。  柔らかく触れあわせれば、腕の中で彼女の体温はあがり力が抜けていく。  ──ほら、俺のこと好きだろ。絶対好きだ。  唇を重ねながら心の中で確信する。  だって今日、絶対急いで帰ってきたよな。俺のために。  訊いても否定するのはわかってる。この意地っ張りの負けず嫌い。  確かめる方法は、俺たちにはひとつしかない。
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