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◇
「千秋!」
玄関にその姿をみとめた瞬間、俺は思わず抱きついた。
「な、なんですか」
「なんでもねぇ!」
「なんでもないのかよ」
驚きながらも背中に手を回し、ポンポンと宥めるように叩いてくれる。
それが嬉しくてついぎゅうぎゅう抱きしめると、布施は少し迷惑そうに呻く。
顔を覗き込めばうざったそうに目を逸らしたが、頬がほんのり赤くなった。
なんだよ、照れてんのか。布施のくせに可愛い。
そのまま唇を寄せれば目を閉じる。
柔らかく触れあわせれば、腕の中で彼女の体温はあがり力が抜けていく。
──ほら、俺のこと好きだろ。絶対好きだ。
唇を重ねながら心の中で確信する。
だって今日、絶対急いで帰ってきたよな。俺のために。
訊いても否定するのはわかってる。この意地っ張りの負けず嫌い。
確かめる方法は、俺たちにはひとつしかない。
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