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「実際に俺が見たわけじゃねぇし、あくまで噂だけどよ。夜にあそこ通ると、男の苦しそうな声が聞こえてくるとか、死んだおっさんとそっくりな男が地蔵の前に俯いて立ってるとか、そういう話が出てるんだよ」
「お前なぁ、嘘だろそんなの。幽霊だの妖怪だの言うのは、ただの作り話か錯覚だよ」
幽霊なんているわけがない。そう鼻で笑いビールを喉へ流し込んだ私を、友人は悪戯小僧のような目で見つめると、
「そんなこと言ってぇ、内心少しはビビッてんだろぉ?」
と茶化すような言葉をかけて、寄せていた身体を離した。
「ビビッてなんかいねぇよ。何なら、帰りにオレそこ通って帰ってやろうか? 実際に幽霊とやらが出るのかどうか、確かめて報告してやるよ。どうせ帰る方向だし」
思い返せば、酒が入って気が大きくなっていたせいでしょう。
私はそのとき、特に何も考えずそんな大口をたたいてしまったんです。
「お、マジかよ。いいねぇ、是非ともやってくれよ」
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