第1章

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 じりじりと暑く照りつける太陽に辟易しながら、僕は道を歩く。  サンダルごしにも、アスファルトの照り返しが伝わってきて、僕はじわりと額に浮かんだ汗を拭いながらのっそりと歩いているのだ。  ――暑い。  どうしてこんなに暑いのか、と言えば、それは夏だからだ、としか答えようが無いのだけれど、それにしたってもうへとへとだ。  歩いて、歩いて、歩いて。  だけど僕はいったいどこへ行こうとしているんだったっけ?  そんな詮無い疑問がちらりと頭を掠める。  でも歩かねばならないのだ。――なんで? どうしても。  まるで炎の上を歩いているかのような――  そう思ったら、なんだか熱さがいや増したような気すらする。  僕はふと立ち止まって、振りかえってみようとする。すると、 『振りかえったらだめだよ』  と言う声が耳元でじんわりと滲んできた。  なんで、どうして、僕は叫びたくなる。もうへとへとだ、立ち止まりたい気持ちが胸の奥から沸き上がってくる。 『振りかえったら、だめだよ』  何度も何度も聞こえる、不吉な声。だけど、抗いたくなる声。  僕はぐるっと、振り向いた。    ――後ろに広がるのは、虚無。  僕はいったいどこを歩いていた?  じりじりと熱い足元、じりじりと熱くなっている身体。  いったいここは―― 『振り向いてしまったね、君を助けたいと思っていたのに』  その声は残念そうにそう言って、そしてぷつんと聞こえなくなった。  あの声は……もしかすると救済の声だったのだろうか。  僕は一人、灼熱の原に取り残されて。  流す涙も、じゅうじゅうと蒸発していく……。
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