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店員とはいえ、今日はワカコを祝うパーティだ。
エンジもTシャツではなく白いシャツを着て給仕に勤しんでいる。なかなか様になる格好だ。
「なによ、自分が振られたからって当たんないでよね」
「……おっ、オレはそんなつもりじゃ」
「あんた、私のこと嫌いでしょ? だったらほっといてよ」
「アホすぎてほっとけねぇから忠告してんだろ」
「余計なお世話。ダイキさーん、この店員タメ口きてくるんですけどー!」
「あっ、ちょっ、バカ、やめろ……っす」
エンジとマヤがすごい勢いで言い合っているのを、冬子と雨宮がぽかんとして見ている。と、
「伊藤さん、うるさい。少しは静かにできないのか?」
磐田がツカツカとやってきて、マヤの頭を軽く小突いた。
きゃっ、と嬉しそうな悲鳴をあげて、彼女は磐田の腕にしなだれかかる。
それを見て、エンジがものすごく嫌そうな顔をした。
「あっちに座るから、行くよ。小野瀬、雨宮くん、エンジくん、後でまたね」
片手を上げて冬子たちに挨拶すると、磐田はマヤを連れて颯爽と去っていった。
残されたエンジも、「オレも行きますね」と溜息を吐きながら近くのテーブルを片して、厨房へと戻って行く。
一連の流れを見ていたふたりは、呆然としたまま呟いた。
「……ねぇ雨宮、今のみた?」
「みた」
「あれって嫉妬だよね?」
「だよな、明らかにかっさらってった」
いつの間にかどういうわけか、磐田とマヤの関係性は少しだけ変化している。
しかもそれに、エンジが絡んでいるようで。
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