衝撃

6/15
前へ
/83ページ
次へ
「ヒロトさん、 上がります」 「リュウっ…」 嫌がる麗奈を引っ張って強引に玄関を通っていった。 そうしてリビングに踏み込んで俺は一瞬固まった。 「あら、 お客様?」 ソファーに女が座っていた。 麗奈は驚くわけでもなく、 ただ女から顔を背けていた。 「麗奈さん、 今晩は」 三十代くらいの女は、 笑いながらネットリした口調で麗奈に話しかけた。 「そっちのあなたは、 もしかして金子琉君? わあ。 グランプリの優勝候補にこんなところで会えるなんて素敵」 女が立ち上がり、 近づいてきた。 長い髪を垂らしていて、 背は高くなく肉感的な印象を受ける。 「申し遅れました、 ライターの村木といいます」 差し出した名刺には、 スポーツライターの肩書と村木貴子という名前があった。 「明日は試合でしょう?二人ともこんな処で油を売ってていいのかしら」 笑みを崩さずに村木が言った。 「…村木さんは、 大翔さんとはどういう」 俺は、 辛うじてその問いを絞り出す。 麗奈の涙の理由がこの女と判り、 腸が煮えそうだった。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加