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歩きながら俺は尋ねた。
「前にもあの村木って奴に会ってるの?」
「…うん。
先週」
忙しくて会えないと言われ我慢していた麗奈だが、
耐えられず部屋まで行って村木と鉢合わせしたのだ。
大翔さんの顔を思い出す。
とびきりイケメンではないが男らしく誠実そうだった顔は、
能面のような無表情で俺たちを見ていた。
先月カナダで会った二人はとても仲がよかった。
目を逸らしたくなるほどに。
あの人が他の女を家に引っ張りこむなんて信じられない。
「…なあ、
腹減らない?」
「ううん」
隣を歩く麗奈は一ヶ月前より明らかにやせた。
そんなに思い詰めていると思うと、
マンションに戻って連中を殴りつけたい衝動に駆られる。
「やっぱり先生たちと食えばよかったな、
イタリアン」
「だから行かなきゃよかったのに…」
文句を言う彼女の手を引いて通りにあるファミレスに入る。
「お前も何か食え」
「お腹空いてないし」
「いいから」
強引に席に座らせる。
「いいから何か頼めよ。
俺たち明日は本番なんだから、
そんなフラフラじゃ飛べないぞ」
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