刹那

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私がカナダから戻ってしばらくすると、 漸く彼がアメリカでの取材を終えて帰国してきた。 疲れてはいたが満足そうな様子に私も嬉しくなる。 今回の仕事はとても実りあるものだった上、 昔から憧れていた人と行動を共にすると言う夢のような一時だったらしい。 彼が真面目に仕事に取り組んできたから、 きっと神様がご褒美をくれたのだ。 「おおー!サイン入りバット!」 その人に夢中なのは漣先生も同様で、 お土産を貰って小学生のようにはしゃぐ。 「大翔、 あの人とかなり親しくなったんだろ。 俺も会いたい」 「いつ日本に戻るかもわからないよ。 天下の金メダリストなんだから自分でオファーしろ」 「断られたらショックだから嫌だ」 「お前な…」 珍しく漣先生がヒロト君の家に送ってくれると言うから車に乗せてもらったら、 取材先の話を聞くのが目的だったらしく部屋に上がり込んで帰らない。
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