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「お前たち、まるで光源氏と紫の上だな。
子供の頃から懐かせて、大きくなったら嫁にして」
俺が軽口を叩くと奴の顔色が少し変わった。
「俺が?」
「そうだろ。
世間じゃこういうの男の夢なんだろう」
「冗談じゃない」
大翔は吐き捨てた。
「源氏って奴はな。
十にもならない若紫を拐かしてきて親切ごかしに面倒を見て、
大人になった相手が油断したところで無理矢理自分のものにした。
彼女の意志はないに等しい」
奴は更に言った。
「そんな経緯で妻にしておいて後からも女を作っている。
あんな屑野郎と一緒にするな」
余りにも源氏を罵るので少し可笑しくなったが、
生真面目なこの男らしいなと思った。
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