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 ベンチの脇でバスを待ちつつ、横目でちらりと盗み見る。本当に華奢な体だ。細い首。薄い肩。胸、腹、背はあまりにも平らで、むしろへこんでいるようにさえ見えてくる。腕も、指も、悠介が握りしめたら折れてしまうのではないかというほど細い。今のところ握りしめる予定がないのが救いだ。 (あ、クリームついてる。)  赤さの強い唇の端にホイップクリームがちょこんとついている。ぼんやりとした目といい、なんだか隙の多い人だ。「ついてますよ」と余程言ってやろうかと思ったとき、住宅街の角を曲がってバスがやってくる。悠介の学校方面へ向かうバスだ。  定期を取り出して人の少ないバスへ乗り込むが、男はベンチに座ったまま動かない。便が違うのだ。  やがてドアが閉まり、バスが走り出す。振り切るように視線を車内に向けた。つい毎朝、目がいってしまう。いつか太るぞー、なんて意地の悪いことを考えたのははじめの一週間だけだった。  悠介が快適なバス通学を始めてから更に一週間が経った。  相変わらずバス停のオレンジ色のベンチには例の男の姿がある。男の体つきは、この一週間で少しずつ変わってきた。悠介の想像していたのとは違う方向に。 (なんか痩せ……やつれてきていないか?)     
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