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 なめらかな曲線を描いていた頬がこけてきた。シャツの裾が以前よりもだぼついてきた。襟と首の間に隙間ができた。ただでさえ細いのにそれ以上どうやって痩せるんだと目を疑うが、実際に男の体躯は一回り薄くなっている。そんな風にまじまじと観察している自分が気持ち悪いが、一度気づいてしまった以上気になって仕方がない。  今朝も彼は例のカロリー爆発クロワッサンを口に詰め込む作業に勤しんでいる。あの物量を食べて、昼食を食べて、夕飯を食べて、……それでそこまでやつれるものだろうか。  ふと。悠介は突飛な推論に至る。 (もしかしてこのパン以外何も食べてないんじゃないか……?)  そんな馬鹿な、と鼻で笑うが、否定しきれない悠介がいる。だって、でなければこの痩せ方はおかしい。  昨日の英語の小テストの結果よりも、今日の化学の宿題をやっていないことよりも、ベンチでパンを貪るこの男のの食生活が気にかかる。余程声をかけようかと思って横に立ち、しかしなかなか話しかけられずにいるうちに、今朝も悠介のバスが来てしまった。後ろ髪を引かれる思いで乗り込む。あの男はどの便に乗ってどの町へ行くのだろう。その姿が遠くなるのを、車窓越しに見えなくなるまで眺めていた。
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