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 百八十に届こうかという長身に程よく筋肉質の悠介に対して、嫁さんという言葉があまりにミスマッチで一同は大声を上げて笑いころげる。それに対して腹を立てることはしないが、ふと引っかかるところがあった。トレードによって手に入れた卵焼きに箸を刺したまま、ふむ、と考え込む。なるほど、そういう考えもあるのか、と。  突然箸を止めてぽかんとしている悠介に気づいて周りがいぶかしげに見てくるが、悠介の中には次々献立が浮かんでくる。  想像しただけで、緊張で手のひらに汗がにじんだ。だが、それに負けないくらいワクワクもしていた。  翌朝。悠介ははちきれそうな緊張と、いつもよりひとつ多い手提げ袋を抱えていつものバス停に向かった。住宅街を外れて一軒ぽつんと佇むコンビニ店の前の、この時間は利用者が二人しかいないバス停。その古ぼけたオレンジ色のベンチに、今日もその姿はあった。  着慣れたスーツ。一段と痩せた姿。手にはいつものカロリーモンスター。悠介になど全く気付いていないかのようにぼんやりとした様子で、ちびちびとパンを齧っている。 いつもこんなにぼうっとしていて仕事では大丈夫なのだろうか、と。どうでもいいことを考えてしまうのは、緊張のせいだ。手提げ袋をぎゅっと握りしめ、悠介は「あの」と喉の奥から声を絞り出した。     
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