言えない想い

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「お前ら、まだ残ってたのか。お、竹下。お前日直だろ? まだ日誌出てないぞ」 「あ、そうだ。すいませんすぐ持って行きます」  突然顔を出したのは、担任の須藤先生。  そのタイミングで、由美達は先に帰って行く。  私は慌てて日誌をまとめて、職員室へ持っていった。 「ーーーー失礼しました」  職員室を出て、空が薄暗くなっているのに気づいた。 「……きれい」  ゆっくりと暮れて行く空は、雲もなく、まるで深い深い水の底から見上げているように、クリアだった。  そのまま空を見上げながら教室へと歩く。  途中で、美術部の油絵の具の匂いと、開いていた窓から、サッカー部の声。  きらきら、輝く。  階段を上っている時に、不意に聞こえた、口笛の音。  透き通る綺麗な音色。  この曲は、聴いたことがある。  
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