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無意識に足音を消して近づいたのは、2年生のクラスだから。
2年1組。ドアの窓から覗くと、窓側に男のセンパイ。
机の上に腰掛けて、椅子を脚で蹴ってユラユラ揺らしてる。どちらかと言えば、不良っぽい見た目で、苦手なタイプのセンパイ。
なのにクラッシックの曲を吹いてるのが、ちぐはぐに感じる。
私の視線に気づいたのか、急にセンパイは振り向いた。
ばちっ。
やばい。はっきりと目が合っちゃった。
「ーーおい、そこのチビ出てこい」
ドアの下にしゃがんで隠れても、遅かったみたい。
数秒考えて、私は立ち上がって教室へと入った。
「立ち聞きしてごめんなさい……」
「オマエ、だれ」
「い、1年5組の竹下ユイです」
ちゃんと見ると、やっぱり怖いや。制服もルーズに着てるし、短い髪の毛は赤く染めてるし。
睨む顔も怖いよぅ……。
「何で隠れて見てた」
「あ、あの、口笛が、聴こえてきて、綺麗だなぁ、素敵だなぁって、思ってたら、来ちゃいました……」
私が話してる間に、センパイは机から降りて近づいてくる。
パンチされちゃったらどうしよう……!
目の前に来たセンパイは、私よりうんと背高のっぽ。
涙が滲み出てきて、膝がカクカク震える。
「ご、ごめんなさいでした……」
「……ウサギかよ……。そんなぷるぷる震えなくても、怒りゃしねぇよ。……しかしチビだな、おまえ」
自分の首をさすりながら、センパイは呆れたように言って、そして、ちょっとだけ笑った。
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