言えない想い

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「何つったっけ、竹下……ユイか。口笛、そんな外まで聞こえてた?」 「は、はいっ。とっても綺麗でした!」 「綺麗とかいらんし」 「ごっごめんなさい!」  ちょっとだけ見せた笑顔は、びっくりするくらい優しい顔で、口笛と同じくらいに……綺麗。 「いい曲ですよね。私もあの曲、好きです」 「曲名、知ってる?」 「知らないです。なんて言うんですか?」 「俺も知らね。分かったら、今度教えて」  そう言って、センパイは窓側に置いてあったカバンを手に取った。 「もう帰るんですか?」 「ああ。部活の奴らも終わりみたいだぞ」  そういえば、外で運動部の挨拶の声がする。  ほんの少しの会話だったけど、何でだろう。とっても楽しかった。
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