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町の小さな駄菓子屋。
一個十円だの二十円だのといった小さな駄菓子が、所狭しと並べられている。
この店は、陽一の祖母がやっている店だ。
朝の八時から店を開き、夜の八時まで、年中無休で営業している。
陽一が店番をすることになったのは一週間ほど前からだ。
腎臓を悪くして、祖母が緊急入院することになった。
祖母は店があるから、休むわけにはいかないと入院を嫌がった。しかし、入院は避けられない重篤な状況であり、家族で替わりに店番をするからと、ようやく納得させた。
とは言え、父も母も仕事があり、妹は学校がある。
店番ができそうなのは、大学浪人で時間のある陽一だけだった。
なんで俺が……とは思ったが、給料を払うからという父の一言で、陽一も渋々了承した。
祖母からも店の菓子は好きなだけ食べて良いと言われた。
祖母にとっては、陽一はまだ五歳くらいの子ども感覚なのかもしれない。
いざ、はじめてみると駄菓子屋の店番はなかなか良い仕事だった。
朝、店を開くと、たまに近所の年寄りがパンやら茶菓子やらを買いに来る。八時くらいだと、学校があるので、子どもはまず来ない。
そうして昼くらいまでは静かに過ごす。
午後になると学校も終わり、子どもたちが続々とやってくる。夕方くらいがピークだ。
店の奥には居間があり、ご飯はそこで食べる。ずっと居間にいても良いが、それでは客の来店に気づけないため、だいたいは店にいることになる。
陽一は店のレジ台で黙々と勉強していた。
弁護士を目指している。そのために大学の法学部の入試を受けた。結果、今年はダメだった。はっきり言って甘く見過ぎていた。
陽一は通っていた高校でも学年トップの成績で、最難関の国立大学も一発で合格するだろうと、自他共に予想していたのだ。
しかし、結果は無残にも不合格。
屈辱の一年を過ごすことになったのだった。
二年目の挑戦は絶対に失敗が許されない。
予備校に通うことを考えていた矢先に、祖母の入院が決まったのだ。
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