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雨の日になると、赤い服を着たおかっぱ頭の女の子が店に来る。
陽一は店番をやる前に祖母から聞いていた。その子は幽霊なのだという。
最初は話半分で聞いていたが、店番をはじめてから最初の雨の日に、それが本当のことだと思い知らされた。
幽霊だと考えるとゾッとするが、祖母が言うには悪さはしないおとなしい幽霊だと言う。
店の駄菓子をあげるととても喜ぶらしい。だから、その子が来たらお菓子をあげてくれと頼まれていた。
しかし、陽一はまだ一度も女の子に駄菓子をあげられていなかった。
「チョコは?」
毎回、そう訊かれる。
女の子の言う「チョコ」とは、祖母のことだ。「千代子」と言う名前の祖母は「チョコ」と呼ばれている。
病院だと答えると、女の子は傘もささずに走り去っていく。
祖母に話すと「そうかい、それならまた今度だねぇ」と答える。
女の子に心当たりはあるのか、なぜ雨の日に来るのかなどを尋ねても、祖母は「さあてねぇ」としか答えない。
陽一にとっては、さっぱり意味の分からない雨の日の恒例行事だった。
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