ある箱物施設での話

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最近、腰が痛くてたまらない。 立てないほどではないが、鈍い疼痛が朝から続く。 頭もぼんやりとすることが多く、休日は眠る時間が多くなった。 偉人の箱物施設に勤めて数カ月、そんなことが悩みになった。 建物の展示館を開け閉めするときに、誰かに見られているような感覚がつきまとう。 そんなときには施設に置かれている像や祠に何と無く頭を下げる。 かといって良くなった試しもないのだが…。 海沿いにあるためか喉の乾きが多く、給湯室に行き飲み物をもらう。 その施設では奇妙なことに飲み物代はいらないという。 月ごとにお茶代をもらう会社が多い中、驚きの話だったが、 もらえるものはもらっておく主義の上、まだ下っ端なので 特に上に事情を聞くこともなく続けていた。 金銭面でも苦慮が続いていた。 勤め始めた途端に車のタイヤが2シーズン丸ごと取り替えになり、 金欠の上に車検が重なり正直家計は火の車だった。 そんな中、箱物施設のイベントの試作品のために自身のポケットマネーを 犠牲にしていたところ、妙な話を聞いた。 なんでも、その施設では祠のお賽銭の一部使って施設の雑貨費用に当てているという。 倫理的にそんなことが許されるのかと思っていたが、 施設ではすでに何かしらの諸費用にそれらの資金を当てているらしく、 お茶代もその中に含まれているのだという。 …試作品の研究費も、その中から出してもらえば? あんまりと言えばあんまりな話だが、 正直その日の生活にも苦労している自分としては 一時しのぎにはなると思っていたのも事実だ。 結果、多くはないが少なくもない額が自信の手元に入った。 しかし、天罰というものは簡単に下る。 それから数日もしないうちに車のキーと家の鍵がなくなった。 車はレッカー移動され、ようやく余裕の出かけた財布の金もなくなった。 再び金欠にあえぐ中、施設の古参の職員からこんな話を聞いた。 …やっぱり、祟りってのはあると思うよ。 その人も施設に勤め始めた頃から腰痛に悩まされていたという。 朝から続く疼痛に医者に行けども原因がわからないとの一点張り。 そんなとき、ふと給湯室に置かれていた飲み物を飲まないようにしてみた。 すると、不思議なことに疼痛が軽くなったのだという。 …まあ、感覚の問題かもしれないけどね。 そういうと、その人は自身の持ってきたジンジャーティーをすすった。 …以来、こちらも湯だけを飲むようにしている。
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