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「お席にどうぞ。」
案内された席に座り、大きな鏡を見ると後ろに立っている店員さんと目があい。
「どれぐらい、切りますか?」
「軽くして、整えて貰えるだけで大丈夫です。」
「わかりました、先にお飲み物をお持ちしますね。コーヒーで大丈夫ですか?」
「あ、はい。」
席に座りながら、お店の中を見回してみるとカット用の席もシャンプー台も一つしかありません。
「どうぞコーヒーです。すみません、ハサミ取ってきますんで少し待っていてもらえますか?」
「えっ、あ、はい。」
「本当にすみません、今持ってるの……少し刃こぼれしちゃったみたいで。」
そう言って見せられたハサミになぜか背筋がゾワっとしたのです。男性が奥へ入ったのを見てから、出されたコーヒーに手を伸ばした時でした。
コーヒーカップの取っ手をつかんだ私の手の上に切れた髪がたくさんついた女性の手が重なっていたのです。
「!!!!」
「……ぁっ、あぅ、……だ……ぅ…!!」
「キャアァァアァーーー!!!!」
恐怖と共に、その手を振りほどいた勢いでコーヒーカップを床に落としてしまいました。
床に落ちたカップから溢れたコーヒーは少し開いていた床の隙間に流れていったのです。そして、落ちていくコーヒーを誘導するように長い髪が出ているように見えました。
「…大丈夫ですか?」
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