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 それからというもの、 『彼女がいる方に対して、やたらめったらに連絡しない』 『合鍵を使って互いの部屋に入り浸らない』  というルールが、暗黙の了解で出来たのだった。  だからきっと、今回も自分はそうすればいいのだろう。安藤の相手が今回は『男』というだけで、これまでと大して変わらない。  古瀬のことはあまり好きじゃないけれど、安藤があんなに誰かのことを想って嬉しそうな、優しそうな顔をするのを見るのははじめてだった。  本当は安藤の付き合う相手が男だということにも、そしてその男というのが後輩の古瀬だということにもまだ戸惑っている。  しかし親友の恋を応援したくないと思うやつがどこにいる? そう考えたら、別に相手が誰であろうと、気にする必要なんてないのかもしれない。  よし、ちょっとスッキリした。  ふわぁとあくびをして、ホームに来た電車に乗り込む。電車内から、雄馬は再び反対側のホームに視線をやった。  少し前までイスに座ってゲームをしていた少年二人は、もうそこにはいなかった。
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