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冬休みはあっという間に過ぎ、気付けばいつも通りの生活に戻っていた。
しかし雄馬の心境はいつも通りではない。
安藤にお土産を渡しそびれたあの日から、安藤からまったく連絡が来ないのだ。あれから三週間が経つ。
雄馬の部屋に来ないのはもちろんのこと、メールも電話も、何もない。安藤に何かしてしまっただろうかと記憶を辿ってみても、正月に突撃訪問したぐらいしか、思い当たる節がない。
自分から連絡すればいいのだが、寂しがってると思われるのが嫌で、あえて自分から連絡するのも憚られる。
「なにやさぐれてんだよ」
学生食堂で昼ごはんの定食を食べていると、サークル仲間の永田が声をかけてきた。
永田は雄馬の前の席に座り、ラーメンを食べはじめる。永田とはサークルだけでなく、学部も受けている講義もほとんど同じなので、話すことが多い。
「別にやさぐれてねえし。つか、そこ座んな」
「いやいやいや、その言い方、完全にやさぐれてるだろ」
永田によると、学生食堂の奥で激しい貧乏揺すりをしているやつがいると思ったら、雄馬だったらしい。
そんなに貧乏揺すりをしている自覚はなかった。無意識だった。
「そうそう寺尾さぁ、スマホ失くして変えたんだろ? バックアップとってなかったってマジ?」
「ケチって容量少ないやつにしてたからな。バックアップする容量もなかった」
「ってことはもしかして、アドレス帳パア?」
「ああ。ぜんぶ消えた」
「やべーな。ラインは生きてたか?」
「パスワード忘れてログインできねー」
「おまえ、それ早くなんとかしといたほうがいいんじゃね?」
「……めんどい」
「でもいざというときのためにさー」
「ああもう! そんな場面しばらくねえよっ」
イライラして言うと、思ったより声が学食に響いてしまった。
やはり永田にはやさぐれているように見えるらしく、ぷっと笑われる。
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