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「あっ、いえ。なんでもないです。だから……寺尾先輩から、連絡してあげてくれると助かります」 「わかったよ。嫌な言い方して悪かったな」  苦手な古瀬にも素直に謝れるくらい舞い上がっていた。そのテンションのまま、ふとずっと疑問に思っていたことを訊いた。 「そういえばさ、三日の日、おまえ安藤の部屋にいたじゃん。正月は二人で過ごしたとか?」  古瀬の表情を見た瞬間、訊いてしまったことを後悔した。 「……っ……えっと……。……はい……」  古瀬は恥ずかしそうにうつむいた。 「そ、そっか! 一人で正月過ごしたんだったら、それこそ寂しいじゃん? オレは実家帰ることになってたし! だから可哀想だなーって思ってたんだよ」  自分でもわざとらしいと思った。 「じゃあな!」  その場を逃げるようにして、雄馬は離れた。小走りをしていたつもりなのに、いつの間にか全力で走っていた。  自分はどうして、あんな質問をしたのだろうか。その質問に肯定した古瀬を見たときの頭の冷える感覚は一体何なのだろう。  ただ雄馬は、今の自分の顔を古瀬だけには見られたくないと思った。
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