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「おかしいよな。あいつ男なのにすっげー可愛いんだ。もうなんていうか、それにやられた。可愛すぎる……。誰かを可愛いって思う感情に、男とか女とか関係ないんだな。そんな相手、滅多に出会えるもんじゃないなって、思ったんだよ」  安藤はいとおしいものでも見つめるかのような優しい目をしていた。 「本当にマジなんだな」 「寺尾の『マジ』って単語はこわい」 「なんでだよ」 「さっきおまえオレに『おまえかなりマジ?』って聞いてきただろ。マジでゲイになったのか、って言われてるのかと思ってすげービビったんだからな」  先程自分が安藤に「マジなのか」と聞いたときに安藤の様子がおかしくなったのは、それが原因だったのか。ずいぶんとナイーブになったものである。 「なにビビってんだよ。あんときはまだおまえ古瀬と付き合いだしたなんて言ってなかったじゃねーか。しかもあながち間違ってなくね? おまえ、ゲイになったんだし」 「おまえ直球すぎだって。でも俺は他の男なんて興味ない。あいつだけだよ」 「いやいやー。でもゲイはゲイだろ。認めろよ。オレはちゃんと友人として受け止めるぞー!」  雄馬は演劇風に、大げさなそぶりで両手を大きく広げて言う。  それを見て「ゲイの人に怒られるぞ」と注意しながらも、安藤は笑っていた。  こんなやりとりをしていくうちに雄馬はだんだん安心していった。なんだ。何も変わらないじゃないか……。  一時は安藤に対してどう接すればいいかわからなくなりかけたが、別に大したことではないのかもしれない。いつも通り、周りからはヘビーに聞こえるような話もバカみたいに笑って話せる。  雄馬と安藤の仲は、昔からそうだった。  いつものテンションで話しながら歩いていると、あっという間に駅に着いた。
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