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哀歌は胸元からすっ…と拳銃を取り出す。
それを見て小町と鐘本は戦慄した。
小町の方は出血と酸素不足で意識が朦朧としている様だった。
鐘本は最初は小町の事を気にする素振りをしていたが、
自分の生命の危機だからか?遂に本性を曝け出したのか?、小町の事等微塵も気に掛ける様子は無かった…。
そんな二人の姿を見て、哀歌は取り乱していた心を落ち着かせ、にんまりと歪んだ笑みを浮かべて見つめた。
「…ふふふっ、あははっ!!やっぱりっ!!ほぉら~、見なよ~、小町ぃー。鐘本の奴、アンタの事なんか無視して自分だけ助かろうとしてるよ!……あぁ…、もう…、そこまで考える意識なんか残って無い、か……」
やっぱり人間なんて醜い。鐘本はもっと特別に醜い・汚くて醜悪…。
哀歌は独り語りをする様に、はたまた、一人で踊る様に、
饒舌に語りながら辺りへ向かって発砲した。
チュイン、チュインッっと金属に撃って弾丸が跳ね返る様な独特な音が廃屋に木霊する。
「誰かぁ…っ!誰かっ!…たす、けて…っ!」
必死に声を絞り出しながら逃げ惑う鐘本だが、ここは生憎、人気の無い廃屋で。
だから銃を発砲しようが、助けを求めて泣き叫ぼうが誰にも 届かない……。
逃げる鐘本だが銃創による痛みと出血から段々と身動きが取れなくなっていった。
その様子を見て哀歌は…、
「鐘本~、そんなんじゃあ、追いかけっこ、逃げ切れないよ~…?」
と楽しげにゆっくり、ゆっくりと追いかける。
鐘本の方は計画とは違ったが、これはこれで精神的に追い詰め苦しめられ、
復讐が出来ているのではないかと思った。
…そんな事を諮詢していたら……、
「あら、壁際まで着いちゃった。…これでもう逃げ場は無いね」
恐怖に怯え戦き、カタカタと歯を揺らしながら目には涙を浮かべ震える鐘本。
「…ゆ、ゆるし、て……」
懇願する鐘本に対して哀歌は
「本当の事、全部思い出した?」
と、子供を諭す様に笑顔で優しく問いかけた。
「っうんっ、うんっ!!…本当は忘れてなんか…無かった、から…。あやまります…、おねがい…、だから…ゆる……」
鐘本が言い終わる前に額に銃口を向け
バンッ!!
「……やっぱり……嘘吐き…」
哀歌は今まで動いていたソレを後にすると、小町の周りに撒いた灯油に火を落とした。
「…アンタもじゃあね。…小町、アンタはある意味、被害者だね」
そう言い残して廃屋から去って行った
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