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「…貴女の依頼のパートナー・ソウマの事、でしょう?」
「………はい」
それしか返事が出来なかった。
「ソウマを含め、此処にいる社員はね、皆、特別なスキルを持っている。普通の探偵が行う様な身辺調査で用いる技術やら、一般的な護身術から人殺しの、暗殺スキル…迄、等、ね。社員は皆、其々が某かの辛い過去を抱えている。…だからこそ、私の会社設立に賛同してくれて、被害者の依頼人の気持ちに寄り添う事が出来る……。ソウマだって勿論、そう。…私は極力、社員の過去に何が遭ったのか、其れは訊いたりしない。本人が話してくれるまで、ね。…だからソウマの過去も何があったのか、本当は詳しくは解らないの。それにソウマって他の社員より、特に無口じゃない?」
…と苦笑いを浮かべながら話を続ける社長。
「……でも、此れだけは約束出来る。ソウマも含めて、うちの社員に悪い子は居ないから…」
話し終えた社長は優しく笑みを浮かべる…。
それを聞いた哀歌は…
「……だから皆さん、お優しいんですね…。私が出逢う事が出来たのが、此処で良かったです。皆さん、お世話になりました。依頼料金以上の事までして頂いて、本当に、ありがとうございました」
深々と頭を下げて礼をする哀歌。
「……では、最期に 貴女の成すべき事を していらっしゃいな」
「…っ、……は、いっ……」
また、涙を浮かべる哀歌。
……もう 二度と 逢う事は叶わない、 優しいひとたち。
最期に出逢えたのが こんな人達でしあわせだったーー……。
【依頼料】とは言ったものの、本当はなけなしのお金で、
他の一般的な身辺調査会社より本当に安い、心ばかりの料金だった。
哀歌は振り向かず そのまま 会社を出て行く。
社長は物思いに耽りながら、
これから死に行く哀歌の毅然とした後姿を 黙って見送った。
(……哀歌ちゃん、被害者の中でも 貴女の様な清廉とした心を保った子は珍しいわ…。…死後、安らかに眠れる事を願います…。【私達】は被害に遭わなければ、【こんな事】等…、しなかったのだから……。【貴女は 過去の私】……)
哀歌の【未来】に幸有らん事を祈りながらーー……
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